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短編 水たまりに一滴
 ぴちゃりという水音が聞こえ振り返ると、視線先にあった水たまりには、大きな波紋が広がっていた。
 雨でも降っていたなら、まず見つけることはできなかっただろうが、幸いなことにその水たまりには一切の曇りもない、鏡面のような姿をしていて、波紋の広がる様子がまるでビデオのスロー再生をするように、鮮明にこの両目へと刻み込まれていく。
 恐らく、水たまりの上部にある木の葉が、雨粒を抱えきれなくなったが故のことだろう。
 雨上がりの地面はズボンの裾に跳ね返りの汚れつきやすいのであまり好きではないが、こういった雅な雰囲気は嫌いではない。
 かといって長靴をはいて歩くというのも、ファッションという面においては愚作と言わざるを得ない。
 仕事だとか家庭生活におけるちょっとした用事であるなら色々と割り切って考えられるのだが、残念ながら雨上がりの晴天の下を長靴姿で、それも嬉々として歩けるのは子どもたちくらいだろう。
 いい年をした大人にしてみれば、よほど斬新なデザインでもない限りは、皆の視線を独占してしまうこと間違いないだろう。
 若者の多い、オシャレな街であるならなおさらだ。
 これがビジネスマンの多いオフィス街であったり、農林水産の業者の集まる仕事場であったならまだ違和感も少ないはずだが、生憎これから向かう先はそういった場所ではない。
 少なくとも友達との待ち合わせにゴム長というのはネタとしてはありかもしれないが、せっかく用意した薄桃色のシャツに暖色系の上着、それとハーフパンツの組み合わせに追加する勇気はなかった。
 もっとも、現在はサンダルを履いている。
 サンダルであれば楽だろうし、今の服装にも割と合う。
 ただ汚れやすくもあるので水たまりは避けなければいけないが、それは高級な革靴であっても大差ないだろう。
 一滴が水たまりに落ちる。
 ただそれだけなら優美なものだ。
 だが、そこに自動車が通るとなるならそれは瞬時にやっかいなトラップと化す。
 立っているだけで汗ばむような夏日であるならまだしも、晩春でそれは難しい。
 地面にできた凹凸と、そこに張られた水鏡に注意しながら、待ち合わせの場所まで急ぐ。
 そこに映るのはいつまでもにごりのない、美しい空であってほしいものだ。
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