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短編 頑張れ
 ――頑張れ。
 ――諦めるな。
 ――自分を信じろ。
 耳に入ってくるそんな応援の言葉によって、私の意識は試合から現実へと引き戻された。
 目を向けてみると、試合をしている選手たちの身内と思われる人々が、懸命な様子でそれらの言葉を投げかけている。
 がんばれ、がんばれ、がんばれ。
 まるでその言葉しか知らない動物のように。
 自分も試合の最中に応援をもらったことはあるのでわかるのだが、実際声援の内容はほとんど頭には入らないものだ。
 ただ、何か自分の為に声を上げているとわかっていたから、もしくはそうであると思い込んでいたからこそ、選手として最後までプレイすることができたのだと思う。
 だが、いざこうして冷静に、観客としての立場で応援の言葉を耳にすると、こうも杜撰なものなのだろうかと、驚きを隠しきれない。
 恐らく、応援する側としては決してそんな額面通りの意味で使っているわけではないのだろう。
 だが、今こうして聞こえてくる言葉たちは、いずれも言われたところでどうしたらいいのかわからない、あまりにも曖昧で精神論的な言葉たちだ。
 これをコーチや監督に言われたなら、迷走してしまう事違いないだろう。
 それなのに使ってしまうのは、やはり無難で、定番になっているからだ。
 頑張れや諦めるなという言葉を掛ける状況というのは、本来頑張っていない人間や諦めている人間に向けて使うのが筋というものだろう。
 逆に考えると、それは頑張ってない、諦めているとみなされているのではと疑心暗鬼に陥ってしまいそうでもある恐ろしい言葉だ。
 応援とは、自分は味方だということを示すことで競技者を過度の緊張から守る事だ。
 それがプレッシャーになるようでは、それは応援とは言えないだろう。
 もっとも、自分のように応援の言葉から変に勘ぐるようなことをする人間もそう多くはないと思うが……。
 あちらこちらから聞こえてくる声に、最早試合には集中できなくなっていた。
 もうここで試合に集中するのは無理だろう。
 そう思った自分はその場を立ち、休憩所へと足を進めた。
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