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短編 消える怪盗
 外灯の下。
 華やかな夜の街からは賑やかな声が聞こえてくる。
 しかしながら、彼らの注意は頭上に向くことはない。
 だが、逆にそれは好都合でもあった。
 屋根の上を移動するのは、昼間であれば目立つことこの上ないが、日の沈み切った今なら夜の闇によって見事に包み隠される。
 月明かりのみという数少ない光源のおかげもあって、誰かがそれを目にしたとしてもはっきりと視認することはよほど注意を払っていない限り無理なことだ。
 それに、この街は建物が連なっているというのも大きい。
 密集した建物群は、多少の差異はあるとはいえ、跳躍すれば次の建物へと移ることが可能だ。
 屋根の上ギリギリで踏み切り、次の家屋へと飛び移る。
 雨が降っていたなら滑りやすくなっているため危険ではあるが、星が瞬く今の天候であるなら問題はない。
 そもそも何故こんなリスキーなことをしているのかというと、それは追ってから逃れるために他ならない。
 とはいっても相手は空を飛んでいるわけでもなく、日頃から屋根の上を走り回っているわけでもないので、逃げ切るのは容易だ。
 ただ、だからといって油断をしていると、足元をすくわれてしまうので気を抜くことはない。
 背後を振り返ると、まばらな人影が月明かりに照らされながらも近づいてきているのがわかる。
 更に視線を落とせば、歩道にもこちらを見上げながら追ってくる輩の姿が確認できた。
 毎度のことながら、ワンパターンだ。
 面白味も半減してしまう。
 本来逃走劇に楽しみを見出すのは主義ではないのだが、毎回同じような展開になると少しは学んでほしいと敵側としては強く思う次第だ。
 ――まぁ、仕事がしやすいという点では助かるのだが。
 手中にある宝石を握り直し、姿を消す場所を探す。
 確かにきれいな石ころではあるが、それに大金を積むという思考は理解しがたい。
 ただ大金をはたいてくれるのであれば、自分はそれを提供するだけだ。
 弱い月明かりの下では、この石の輝きも半減だろう。
 街も端へと近づき、人気も減ってくる。
 まだ追っての姿は消えていないが、それも承知の上。
 最後に一つマジックを見せて、終わりとしよう。
 駆ける足を止めると、追っても距離を置いて止まった。
 こちらを注意深く様子見しているのがわかる。
 そして、彼らの顔を眺めつつ、足下に広がる暗闇へとその身を投じた。
 以降、そこから足音が聞こえることはなかった。
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