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短編 失敗しない医師が失敗する日
 医者とは、リスクこそ高いがリターンも大きい職業だと思っている。
 一度ミスをすれば、それで人生が終わる。
 しかしながらミスさえしなければ、生涯安泰といっても過言ではないのだ。
 そんなことはないという雇われ医師や専門医もいるだろうが、それは選ぶ畑を誤っているせいではないだろうか。
 都心に医院を構えたいだとか、病院で出世したいだとか、競争相手がいなければそれだけ優位に立てるだとか、そういった高望みを捨てさえすれば、そこそこやっていけないこともないのだ。
 そんなことを言っていると、そんな場所などあるのかという問いが返ってくるものだ。
 はっきり言うと、ある。
 余計な向上心を捨て、過度な高給さえ望まなければ、リスクを減らすことも可能だ。
 それは田舎の医師という選択だ。
 過疎や少子高齢に伴い、一切の医師が不在という村はあちこちに点在する。
 そういう場所は人口も少なく、業務に忙殺されるという危険も少ない。
 分母が小さければ、難度の高い病気の治療に携わるリスクも小さくなる。
 まぁ、まったくないというわけではないが、そこは医師としての腕が試される場と割り切るほかない。
 排他的な地域であるなら、自分でも絶対に行きたくはないが、温和な人の多い地域であるなら決して悪い決断ではないだろう。
 高くはない給与も、交渉次第では若干上乗せも可能かもしれない。
 そうしてやってきた過疎の町の医院はまるで天国のようだった。

 そんなある日、もう都会とは無縁と割り切っていたこの自分に、大病院からお呼びがかかった。
 正直意外な話だった。
 なんでも私は今まで失敗したことのない医師だといううわさを聞きつけてのことらしい。
 確かに自分の腕はそこそこあるという自負はある。
 それに失敗したことがないというのも事実だ。
 地方へ出る前に難易度の高い手術をいくつも経験をしてきている。
 しかし、何故今になって自分なのかという疑問が頭に浮かんでいた。
 そんな疑問も患者の名前を見て納得した。
 政府の要人だった。
 絶対に失敗できないということだろう。
 病院側としてのメンツもあるし、外部から呼んでおけばマイナスはないとの判断か。
 とにかく、こんな機会は滅多にない。
 千載一遇とでもいえるようなチャンスだ。
 そう、この人間の政策で自分の両親は廃業した。
 貧乏の極み。
 そこから必死に勉強して、医師へと上り詰めたのだ。
 私情を挟んではいけないというのは医療の鉄則だ。
 それはわかっているつもりだ。
 手術の予定日は来月の頭。
 緊張と興奮が脳内を目まぐるしく巡っていた。
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