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短編 異質
 砂漠の中にたたずむ一本の木。
 どんなに根を伸ばしても、その身を支えることなど適わない砂粒の地では、その細い幹は傾いて見える。
 それだけではない。
 木の葉の一枚もないその姿は、生きているのかさえ疑問を覚える。
 もしかしたら、何らかの経緯があって砂の上に突き刺さっているだけなのかもしれない。
 指先でつついただけでも、そのまま倒れてしまいそうな、危うさとか弱さを感じる細い木。
 その先端はより細く、砂すらも舞い上がらない微弱な風でさえも細かく震えていた。
 周囲を見渡してみても、他にそれらしき影はない。
 その木よりも幾分背の低いサボテンのような影が遠方に見られる程度だ。
 一面の砂地は太陽の光を照り返して熱の収束先を探している。
 一体、いつその木が標的になるのか――きっと対象になった時には瞬く間に燃え上がり、黒煙を空へと撒き散らすことだろう。
 薄黄金色の地平線と淡いスカイブルー。
 その絵画のような淡い組合せに、上から炭を塗りつけたような黒い影たち。
 それらがアクセントとなってより印象付けられ、存在感を出している。
 異世界から迷い込んだかのような孤独感。
 是非とも写真に撮って形として残したい――そんな衝動に駆られる。
 しかし、いざカメラを構え、ファインダーからのぞきこんでみると、そこにある世界は思っていたものと全然違うものだった。
 何が違うのかというと、そこにある世界が一つにまとまっていたのである。
 それは決してカメラの補正だとか、ピンとの調節だとかそういった類のものではない。
 ただ、異質に移っていたあの黒色でさえもカメラの中では見事に融合して一つの作品として成立して見えたのだ。
 それ自体は決して悪い事ではない。
 でも自分が求めているのは調和ではなく、不調和だった。
 写実的に物事を残すというのも高度な技術であろう。
 だが、自分の感じた印象をそのまま形に残すというのはより難度が高い表現なのかもしれない。
 結局、写真に残すことは諦め、その場を去った。
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