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短編 トラブルの隣で
 手にしたバインダーに視線を落とし、記入漏れがないか確認する。
 チェックすべき項目にはすべてボールペンにてマークが記載されており、抜けはない。
 これで巡回はすべて完了だ。
 後は事務所に戻って上司の捺印をもらえば今日の業務は終了だ。
 そう思うと一気に疲れが襲ってくるような気がするのは、やはり無意識のうちに気を張っていたせいなのだろう。
 だが、気を抜いていてうっかり面倒なミスをするのはいただけないので、改めて気を張り直す。
 家に帰るまでが遠足というように、事務所に帰るまでが現場なのだ。
 施設の扉を開け、通路を歩く。
 さすがに点検日ということもあって、人通りはない。
 自分が一番最後というのは考えづらいが、不安になる。
 そんなことを考えながら歩いていると、向かいから一人の若い作業員が駆け足でやってきた。
 ――何かトラブルでもあったのだろうか。
 気になりはしたが、他の部署の事情に口出しをするのはルール違反。
 それが原因で何かしらトラブルが拡大したりしようものなら責任が取れるかという話になる。
 結局、何があったのかわからぬまま、玄関までたどりついてしまった。
 明日になれば、業務連絡で何かしらの報告が上がってくるだろう。
 今は自分の仕事にだけ気を付ければいいのだ。
 そう言い聞かせながら、外へと通じる扉を開ける。
 数時間振りの青空は、さすがに眩しくて思わず目を細めてしまった。
 若干のめまいにも似たような感覚に、自らの老いも感じる。
 数年前まではこんなことはなかったが、やはり年には勝てないということだろう。
 これからもっと年を重ねたなら、もっと作業がつらくなる。
 そうなる前に、上にはもっと作業を効率的にしてほしい。
 もちろん、作業する側としてはそういう提案をしないわけではないが、相手側がフォーマットを示してくる手前、それに従わないわけにはいかないのだ。
 口からため息が漏れる。
 その吐息には、疲労と未来への不安、そして乾いた笑いが含まれていた。
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