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短編 ヒトリノジカン
 非常階段に一人腰掛け、目の前に広がる、変わり映えしない町並みを眺めていた。
 元々、非常階段などあっても利用する者などほとんどいないものだ。
 非常時でも使う人がいるのかも怪しいものだが、今はそんなことはどうでもいい。
 とにかく一人になりたい――そんな時に使える場所は私にとってはとても貴重だった。
 別に、家族だとか友達とか、近所の人だとかが嫌いだというわけじゃない。
 でも、常に自分の周りに誰かしら人がいるという状況は、精神的にとても疲れる。
 精神をすり減らすという言葉があるけど、まさにそんな感覚を肌で味わっているみたいだった。
 そんな毎日を過ごしていたせいかもしれない。
 普段であれば完全に見落としていたはずの非常階段の扉――それがわずかに開いていたことに、ある日気付いたのだ。
 最初は鍵の閉め忘れか何かだと思った。
 でも、それから数日様子を見ていたら、どうやら元から空いている扉なのだと分かった。
 いや、本当は鍵をかけ忘れてそのままになっているだけなのかもしれないけど……。
 ともかく、現に空いている非常階段は自分にとって数少ない安らぎの場なのだ。
 まぁ、所詮非常階段なので外からちょっと見上げればすぐにわかるので、プライバシーなど確保されてはいないのだが、それでもよかった。
 昔から人付き合いは好きな方ではない。
 得意な方でもない。
 自分の精神を極限まですり減らして、話を合わせるのが限界だった。
 家の中では家族に気を遣い――。
 家を出れば近所の人に気を遣い――。
 学校では知人に気を遣う――。
 そして帰ったらまた家族に気を遣って――。
 そんな毎日の連続がとてつもなく苦痛だった。
 以前はそれさえも普通だと思い込んでいて、洗脳されたロボットみたいな感覚だったのだが、皮肉な事に自我が芽生えてしまったのだ。
 人間としての尊重を。
 ただそれだけでいい。
 愛情なんて欲しくはない。
 とにかく、気を遣わなくてもいい場所を――それだけが自分の願いだった。
 こんな自分だからこそ、未来はきっと暗いだろう。
 そういう世界に生まれてしまったことを、後悔しないだけの何かに出会えたなら……もしかしたら、何か変わるかもしれない。
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