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短編 邸宅に呼ばれて
 相手は豪邸の主という事もあって、ある程度の覚悟はしていたが、通された客間は自分の予想をはるかに超えるものだった。
 やはり人間の想像力というものは限界があるらしい。
 なんというか、一言で言い表すのは難しいのだが、とにかく豪華で部屋全体が煌めいて見えるといった感じだろうか。
 部屋の広さだけでも学校の教室一つ分はあって、柱や壁に汚れも見られない。
 毎日かそれに近い頻度で丁寧に掃除がされていなければ、ここまでの清潔感は得られないだろう。
 更には壁に掛けられた小粋な絵画や、アンティークものと思われる家具が重厚な雰囲気を醸している。
 部屋の中にある物の、いずれもが高級品であるのは素人目にも明らかで、万が一壊してしまったりしようものなら、それこそ一生をその弁償に費やさなければならないのではないだろうか。
 ……そう考えただけで、うかつに部屋の真ん中から動けなくなってしまう。
 立っているだけで緊張するという経験も、一生のうちに数回しか立ち会うことはないだろうが、その数少ない機会に遭遇してしまったことは、嬉しいような、悲しいような、どうにも表現しがたい感覚だ。
 しばらくこちらでお寛ぎくださいと言われても、その言葉をそのまま受け取るには、自分の人生経験は貧しすぎる。
 逆に、ここでの生活に慣れたら慣れたで、日常的な感覚も色々と崩壊してしまいそうで怖いが……。
 とりあえず、じっと立っていてもむず痒い緊張感にさいなまれるばかりなので、部屋の中を歩いて時間を潰す。
 念のため、触って壊したりしないようある程度の距離を空けながら、調度品の数々を見て回る。
 芸術に関しての知識はほぼゼロに近いのだけど、何もしないよりはマシだ。
 それに客間に一人放置するというのは、それほど長時間待たされるという事ではないだろう。
 意外とこういう邸宅では客人の扱いにはうるさかったりするものなのだ。
 ……ただ、ここの主がそういうスタンスを持っていればの話ではあるのだけど。
 若干そわそわしながら、たぶん海外の画家が描いただろう謎の抽象画を首をかしげてみていると、部屋の扉が開かれる音が聞こえた。
 ようやくこの緊張感から解放される。
 その思いから顔を上げた。
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