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短編 カンヅメ
「おいっ、これで全部かっ!」
「あぁ、閉めてくれ――」
 怒号ともいえる荒々しい男の声でのやりとりが聞こえたかと思うと、激しくドアが閉められる音が響いた。
 物陰で荒くなった呼吸を整えていた私は、ほんの少し顔をのぞかせて出入口の様子をうかがう。
 ドアの周りには、大柄の男たちが大小さまざまな机だとか重そうな作業機械だとかを積み上げていた。
 バリケードを作ろうとしているのだろう。
 その様子を見て、ようやく安堵の息が漏れる。
 ここは偶然近くにあった、小さな作業所のような建物。
 別に知り合いの所有物というわけでもなく、自分自身も中で何をしているかもわからないような、本当に『その時偶然近くにあった建物』だったのだ。
 普通であれば、用事もなくそのような建物へ入ることなどないものだ。
 そこへどうして自分がいたのかというと、信じがたいだろうが、追われているからだ。
 ――俗にいう、ゾンビとかいう輩にだ。
 正確にはゾンビなのかどうかもわからない。
 ただ、ゲームだとか映画だとかで見るゾンビのイメージに限りなく近い状態だったからそう呼んでいるだけだ。
 では、何でそんなゾンビが生まれたのかという流れになるのだが、正直そんな事はわからない。
 自分が生み出したわけではないのだから当然だろう。
 唯一確かなのは、現にこうして無事な人間とゾンビとの間で生命のせめぎ合いをしているという事だ。
 実際捕まったらどうなるのかはわからないが、何事もなく解放されるだなんてことはありえないだろうし、そんなハイリスクな行為は絶対にしたくはない。
 ……とにかく、紆余曲折あってこの作業所らしき建物に逃げ込むことができたのは御の字だった。
 ただ、絶え間なくドアを叩く音が聞こえてきて、不安は若干残る。
 安堵など本当にひと時なのだと痛感する。
 とにかく、今は体力を回復させるのが最優先だろう。
 心拍は相変わらず激しいままだったが、全力疾走していたころよりは大分マシだ。
 ただ、平穏を取り戻すのは当分は無理だろう。
 改めて作業所の中を見回すと、自分以外に大柄の男が数人――おそらくここの作業員なのだろう、皆似たような作業着を身に着けている――と、自分と一緒に逃げ込んできた小柄な女性が一名、更には営業回りの最中だったと思われるスーツ姿の男性の姿が見えた。
「一応、非常用の食料品とかはあるが……これ、もつのか?」
 作業員同士の小声での会話が聞こえてくる。
 ――そう、いつまでもここに居られるという保証もない。
 誰かしらが助けに来てくれるまで、自分たちはここに閉じ込められているとも見ることができるのだ。
 今日は、人生で一番長い一日になりそうだ。
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