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短編 ゲームクリエイト
「おつかれ~」
「あぁ、お疲れ様~」
「うっす」
 その声が聞こえたと同時に8帖ほどの小さな部屋からは彼女を迎え入れる男性の声が上がる。
「もう、また散らかして……ちゃんと帰る時は掃除してよね」
「――善処します」
「は~い」
 靴を脱ぎ、上履き用のスリッパに履き替えながらその女性は不満げな表情を浮かべる。
 きちんと自分の履いてきたヒールを揃える辺り、割と几帳面な性格なのだという事がうかがえる。
 そんな彼女に対して、二人の男性は軽くあしらうように軽い相槌を返すばかりだ。
 きっと毎回このようなやりとりをしているのだろう。
 ――とはいえ、女性が言うのももっともな話で、部屋の中は彼らが持ち込んできたであろう包装紙やらビニールやらのゴミが乱雑に転がっていた。
 ゴミ箱らしき筒もないことはないが、生憎今は一目でわかるほどにゴミが山盛りになっている。
 救いだったのは、生ごみだとか強い臭いを発するものがなかったことと、窓が大きく開け放たれていたことだ。
 そうでなければ、この小さな密室空間は小さな実験棟みたいになっていただろう。
 いや、実験棟というよりも実験カプセルとでも言った方がより悲壮なイメージがわくか。
 だが、女性が文句を言ったのは最初だけで、一度下足場所の敷居をまたぐと、すぐさまいつものの席へと向かった。
 部屋の中には玄関から遠い三つの隅に小さなテーブルが置かれている。
 互いが背を向けるように、テーブルの上にはパソコンが置かれ、現在も他の二人は熱心にディスプレイに視線を向け、キーボードで何かを打ち込んでいる。
 その動きは流れるように滑らか――とまではいかなかったが、それなりに手慣れた様子が見て取れる。
「――で、どこまで進んだ?」
 パソコンを起動しながら女性が訪ねる。
「とりあえず最初の部分のコードは終わってる。中盤から終盤は素材がないからまだ――」
「了解。急がせるわ――で、そっちは?」
「まだ。つーか終わるわけないじゃん」
「いいから、どこまで進んだかだけでもいいから教えて」
「……物量は一割くらい。冒頭の部分だけなら半分くらい」
「――ありがと。来週までには冒頭終わるようお願いね」
「はいはい。あ――そういやこの前もらった素材だけど、手直し頼むよ。サンプルのデザインと色が違う」
「え……マジで?」
 露骨に嫌な顔をする女性。
 一方男性陣は淡々とした様子で大きくうなずく。
「あっちゃぁ……ごめん。どの素材?」
「えっと……確か3番だったっけ?」
「――3番と4番」
「二つもか……きついなぁ」
「だったらもっと人数増やそうよ。こっちもギリギリなんだから――」
「……善処、します」
 その女性の言葉に場に苦笑が生まれる。
 体験版の配布予定まであと一週間。
 ギリギリの活動が、今日も続く。
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