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短編 日没の瀬戸際で
 終業のチャイムが鳴ったのはどれほど前のことだろう。
 そう感じさせるくらいに、現在自分が直面している世界は、時間軸という概念から切り取られたみたいに穏やかだった。
 喧騒も何もない。
 ただ自分だけが、まるで昔の映画のフィルムをその箇所だけ切り取ったみたいに、周囲とのつながりが希薄で、孤独で、平穏だった。
 でも、決して目の前の世界は寂しくはなかった。
 白黒でも、セピア色でもない――どちらかというと茜色に染められた世界。
 机も、イスも、教壇も。
 黒板も、蛍光灯も、天井も壁も床も。
 すべてが窓から入ってくる西日にデコレーションされている。
 扉につけられた窓からのぞく、廊下の景色までもが色鮮やかだった。
 もちろん、自分自身も例外ではない。
 この自由に動く右腕も。
 どこかから吹き込んできた風で流れる前髪も。
 今ではもうすっかり身体にピッタリなサイズになった制服も。
 もしかしたら、自分の背後に潜んでいる影でさえも。
 おかげで、自分もこの世界を構成する一つの要素なのだと思えた。
 皆がまばゆく輝く世界では、その光の陰に埋もれてしまう自分であっても、ここでは違う。
 この世界では平等に皆が同じ立場で、同じ役割を担っている。
 優位も差異もない、平等な世界。
 誰一人として欠けても成立しない、何一つ欠けてもいけない存在。
 この場所こそが、自分が今まで探し求めていた場所なのかもしれない。
 しかし、そんな世界でも時間は永遠ではない。
 日は次第に沈み、短くなっていく日差しが、もうじき夜がやってくることを知らせてくる。
 ――そろそろ帰らなければいけない。
 それは自分が学生だからとか、そういう理由ではなくて。
 自分の居場所が日没とともに消え行くからだ。
 温かな色に染まっていた教室は、もう半分以上が寒々しい色に侵食されつつあった。
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