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短編 迷い込んだは夢の花園
 一面に広がるのは真っ赤な花の絨毯。
 頭上に広がるのは、青でもなく、赤でもない――そんな曖昧な色をした空。
 それは、今自分がいるのは本当に現実の世界なのか、それさえも疑ってしまうほどに幻想的で、非日常的だった。
 むせかえるような花の香りは、独特の甘さと青臭さが入り混じり、呼吸をすることすらためらわれてしまう程。
 そんな世界にただ一人たたずんでいるという現状に、どことなく不安を覚える。
 どうやってここまでやってきたのだろうか。
 思い出そうとしても、記憶があやふやで結局答えが出ることはなかった。
 そうなるとここが夢の世界ではないかという仮説に行きつくのは当然の結果だろう。
 だが、その仮説を証明する手段を持ち合わせてはいないのは事実。
 よく、自分の頬をつねって夢か現実かを確かめるという古典的な手法を見聞きするが、現実なら痛いのは当然だとしても、夢の中でも痛いという錯覚を感じることは十分にあり得る話だ。
 そもそも、これが夢の世界だとして得があるわけでもない。
 現実の出来事だと仮定して物事を進めた方が危険性は限りなく低いといえる。
 問題は、これからどうするべきか、皆目見当がつかないという点だ。
 前後左右のどちらを向いても目を引くような建築物も自然の造形物も何もない。
 ただ、赤い花畑が延々と続くばかりだ。
 地平線近辺は靄のようなものがかかっていて視認することも難しいが、そこまで歩いていって確認するというのも不毛な話だ。
 こういう時、ゲームの世界だと何かしらのヒントやら誘導役のキャラクターがいたりして助かるのだが、そうも都合の良い世界ではないらしい。
 ただ、どこまでも続く花園。
 それも赤一色という事に不安を覚える。
 無意識のうちに血を連想してしまったのだろうか。
 花の高さは膝より少し低い程度。
 横になったらかろうじて身体が隠れてしまう絶妙な高さだ。
 もしかしたら、ここは自分の墓場なのかもしれない。
 特に理由はなかったが、なんとなくそう思えた。
 ここは自分の居るべき世界ではない。
 暗にそう言われているような気がして、おのずと体を横たえる。
 下敷きになる花たちに申し訳ないと思いつつも、そっと目を閉じる。
 花の匂いがより近く、強く感じられた。
 そのまま意識を放れば、少なくとも現状が変わるのではないか――そんな希望を抱きながら、そっと思考を無に放った。
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