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短編 待ち続けて
 今日の最高気温は30度近くまで上がるとの予報だったはずなのに、体感温度は20度くらいに思えた。
 最低気温の予報も23度とそれほど寒くはないはずなのだが、もしかしたらここは、局所的に気温が低いだけなのかもしれない。
 ただ、そういった場所は川の近くだとか、日のあまり当たらない所だとか、あとは標高の高い場所だとか、その辺りだろう。
 ただ、確かにこの場所も山になってはいるが、日当たりはよく、体感で低く感じるということは考えづらい。
 となると、考えられるのは何かしらの要素が別途加わっているという事になる。
 それが何かと言われると、厳密にはわからないとしか言えないのだが。
 強いていうなら、オカルト的な雰囲気だとか空気のせいといったところだ。
 だが、それを信じろと言っても信じられる人と信じられない人がいるのも事実なわけで、結局はわからないという事に収束させた方が丸く収まるものだ。
 そもそも、何故こんな場所へ来ているのかという話になるのだが、単純に友達に頼まれて自動車の運転手としてついてきただけだったりする。
 だから、ここが元々どんな場所だったのかなんて知ることもなかった。
 着いた後で妙な寒気がして、改めて友達に尋ねてみたら、この近くに有名な心霊スポットがあると聞かされた次第だ。
 まぁ、来てしまったものは仕方ないし、その場所に近づきさえしなければ悪影響もないだろうと思い、自分はそのままこじんまりとした駐車場で、自動販売機のホットドリンクを口にしながら友達を見送ることにした。
 幸いにも自分たちの他にもここへやってきている人はいるらしく、駐車場には車が2台ほど停められていた。
 心霊スポットを訪れた人たちばかりとは思わないが、誰かしら人がいるという事実が、ちょっとばかしの安心感を与えてくれる。
 ――だが、それにしても寒い。
 肌寒いだけだった感覚が、いつの間にかより強く感じられていた。
 数秒前までホットドリンクを飲んでいたはずなのに、身体が温まっていないような、そんな不思議な感覚だった。
 一体何が原因なのだろうか。
 不安が膨らんでいく。
 霊感とか超能力とか、そういった類の能力は持っていないのだが、嫌な予感がして、不思議と確信もあった。
「……ちょっと確認してみるか」
 友達の安否が気になり、スマホで電話をかけてみる。
 アプリのチャットでも良かったのだが、今は直接声が聴きたい気分だった。
 しかし、なんど呼び出しても通話状態になることはなかった。
「……おい、嘘だろ」
 背筋にゾクッとした感覚が走る。
 だが、諦めずにもう一度電話をかけてみた。
 これでダメなら助けを呼んだ方がいいかもしれない――そんなことを考えながら。
 すると、今度は2コールほどしてからつながった。
 よかった、無事なのだと安堵する。
「おい、無事か?」
 ……尋ねてみるが、電話口には何も聞こえてこない。
 つながっているか確認してみるが、確かにつながっていた。
 それなのに、うんともすんとも聞こえてこない。
 なんだかそれがとても不気味に思えて、すぐさま通話を切った。
 このまま自分だけ帰ってしまおうか。
 そんな誘惑すら聞こえてくる。
 だけど、彼らを置いて帰るのもどうにもためらわれた。
「よし、あと……30分だけ、待ってこなかったら帰ろう」
 目的の場所までは歩いて5分ほどの距離らしいし、それだけ待てばさすがに戻っては来るはずだ。
 通常であれば自分から探しに行くところなのだが、その時ばかりはどうしてもそこを動きたくはなかった。
 車の中に戻り、ひたすらに友達を待つ。
 寒気がどんどん強くなっているように思えた。
 5分、10分と時間が過ぎていく。
 しかし誰も人が返ってくる気配がない。
 そして決めた30分が経過し、車のエンジンをかけた。
 来た道を戻ろうとも思ったが、さすがに気が引けて、一応車に乗ったままそのスポットを眺めてみようと向きをかえ、山道を進む。
 そこは車一台がようやく通れる程度の細い道路で、脇道らしきものもない。
 普通に見て帰るだけなら、見失うことなどまずないはずだ。
 だが――どこまでいってもそれらしき場所が見当たらない。
 自然とアクセルを踏み込む。
 焦りからスピードが上がり、周囲の風景がより早く流れていく。
 それでも目に見える光景に変化は見られなかった。
 まるで、無限の回廊を走っているような、そんな気分だった。
「くそっ、なんだよここはっ!」
 悪態をつくが、それに対する反応などどこからも帰ってはこない。
 そして、数分間走り続けたところで、あることに気づく。
 そう、もしかして、変な場所に迷いこんでいたのは自分ではないのだろうかと。
 寒気がひどくなり、身体が震え始める。
 車が不安定に揺れ始める。
 さすがに怖くなってブレーキを踏んだ。
 急ブレーキをかけたことで身体が前にのめり込む。
 シートベルトをしめていなかったらきっと頭を打っていただろう。
 ゆっくり頭を上げると、そこは自分が残った駐車場だった。
 フロントガラスの前には友達が駄弁っている姿が見える。
 今のは夢だったのだろうか。
 まだ若干震える手を見つめたが、その答えは出てこなかった。
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