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短編 卒研
 大学生にとって、卒業研究とはもっとも重要なカリキュラムのひとつであり、誰もが頭を悩ませる事案であったりする。
 私たちもその例に漏れず、これだという決定的な研究題材を見つけられぬまま、大学最後の夏を迎えていた。
 ……正直、ピンチだ。
 所属する研究室の教授は重要な学会だとか調査があるだとかで夏の長期休暇が終わるまで大学には帰ってこない。
 それまでにテーマを決めて研究を始めていろというのだから、それに甘えて何もせぬまま今に至るのもない話ではない。
 毎年、それで地獄を見る学生が現れるのもウチの研究室の恒例行事みたいになっているが、全然喜べるものではない。
 そういうのは、傍観者側になって初めて楽しめるものなのだ。
「――で、どうするよ?」
「ここまで来たんだから、行くしかないでしょ?」
 私は同じ研究室のマイコと、地方の山中に来ていた。
 夏季の長期休暇ということもあって、避暑も兼ねてのことだったのだが、これが思った以上に涼しい。
 更には日本の原風景を象徴するような豊かな自然が焦燥ですり減った私たちの精神を癒してくれるようで、今の私たちを受け入れてくれているような、そんな心地よさがあった。
 そのせいか、私もマイコも普段にも増して口が軽くなり、足取りも遅くなる。
「まぁ、別に嫌じゃないけどさ……これが旅行とかだったらテンションももっと上がるのにねぇ」
「まぁ、理系の研究室で引きこもってパソコンいじるよりはマシじゃない?」
「それは……言えてるかも」
「あとは紫外線対策だけは何とかならないかなぁ」
「日焼け止めだけで肌がべとべとになりそう」
「いやいや、それは付けすぎ――」
 そんなやりとりを続ける私たちが、これから向かう先に待ち受けているもの――それはありがちではあるが、古くに存在した史跡の調査だ。
 史跡といっても国だとか市町村だとかが厳格に管理しているようなものではなくて、それっぽい建築物のある農村だったりする。
 では、どうしてそんな場所を選んだのか。
 答えは単純で、研究室にその史跡に関する調査資料が残ってたからだ。
 しかも、その研究とやらは途中で終わってしまっている。
 そんなものを見つけてしまったものだから、私たちは渡りに舟とばかりにその研究の継続調査を決定したのだった。
 一体どんな研究資料が見つかるのだろう。
 そんな楽観的な考えは、農村に到着するまでの間続いていた。
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