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短編 若さを顧みる
 すべて正しいことが載っていると信じて疑わなかった教科書の知識と、角砂糖のように甘い正義感を胸に、母校を巣立っていったのは数年前のことだ。
 当時の大人たちからは、社会のことを何もわかってないだとか、まだ子供には早いだとか言われ続け、それに反発していたこともあった。
 だが、現在こうして社会で生活している身からすれば、彼らの言い分もあながち間違いではないと思うようになっていた。
 そう、社会は広くて、深くて、私欲と怨恨、そして計略に溢れていた。
 教科書に描かれた知識や倫理観、道徳観念といったものですら、実生活においては建前の一言に収束してしまう。
 何故正しいと分かっていることを皆は行わないのだろう――社会に出た当初はその不条理に、憤りすら覚えたほどだ。
 結局は、人間は自分の都合の良いように物事を解釈し、事を進めようとする生き物だという結論に行きついたわけだ。
 ルールの上ではそうだけれども、バレなければ私欲のために動いてもいい。
 そんな理想とはかけ離れた実態がはびこる世界と、その住人達を何人も目の当たりにしてきた。
 皆、建前上は理想を口にして偽善者となる。
 では、何故学校では理想しか教えてくれなかったのだろう。
 それとも、教える側の人間自体がそれを知らずに育ってきたのだろうか。
 今更母校に戻って恩師とやらにそれを尋ねてみるというのも、彼らを煽るような行為に思えて、ためらわれた。
 だから、今は極力考えないようにする。
 誰かを恨んだり、妬んだりしないように。
 ただ、毎日を消化するように過ごしていくのだ。
 でも時々、若い学生たちの声を聞くと、どうしても思い出してしまう。
 当時の自分を――。
 甘い世界を――。
 そして、もうすぐ訪れる現実を目にした時の絶望を――。
 切なさと憐れみを胸に抱きながら、遠い昔のその向こうに思いを馳せて――。
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