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短編 怪しい相談室
 他の教室と大差ない、ありふれた引き戸を開けると、そこには異様な空間が広がっていた。
 日もまだ高いこの時刻。
 光で溢れているであろう部屋の中は、黒い布地が垂れさがり、あらゆる光を締め出そうとしている。
 これはお化け屋敷か、はたまた何らかの儀式の場か。
 それとも集中を高めるための修行の部屋なのか。
 入口からその様子を眺めるだけでは答えは出そうにはない。
 一歩部屋に入り、後ろ手に扉を閉めると、それだけで自分の周りの光が一気に消え失せたように感じた。
 緞帳というのだろうか、厚く、黒く、重々しい布が、何重にも重なって部屋の最奥地を覆い隠している。
 まるで大切な我が身を守る、貝殻のように。
 その厚く、柔らかで、しかしどこか力強い布たちを一枚ずつ掻き分けていくと、四枚目をくぐったところでようやくその存在を確認することができた。
 もしこの部屋が他の教室と同じ大きさだとしたら、あまりにも寂しい。
 部屋の奥――何の変哲もない壁の目の前に、机が一つ。
 目に見える範囲ではイスも目の前に一つ。
 机には黒づくめの人影が確認できたので、見えはしていないがイスの数は全部で二つということになるだろうか。
 黒づくめの人間は、顔を俯けているのか、男か女かもわからない。
 しかも照明も薄暗く、もしかしたら人間かどうかも怪しいくらいだ。
 この人影が人間ではなく人形であったとしても、すぐにわかるということはないだろう。
「……あの」
 一声出したところで、自分の声の小ささに驚く。
 この張り巡らされた黒い布によって自分の声が吸収されてしまっているらしい。
 その事実に戸惑っていると、目の前の人影がおもむろに顔を上げる。
 少なくとも人形ではないらしい。
 だが、顔まではわからなかった。
「……いかがしましたか?」
 瞬間、背筋に冷たいものが走る。
 それは男性のものでも、女性のものでもない、機械的な声だった。
 変声機を使っているのだと気づくまでに数秒ほど時間を要したが、それでも大分落ち着きを取り戻せた。
 目の前のイスに座り、その人物と向かい合う。
 いざ目の前にすると、思いの外圧迫感が凄い。
 緊張で声が震えはしないかと心配しながら、一呼吸を置いて、自分は口を開いた。
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