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短編 些細な迷い
 自動ドアをくぐると、冷房のひんやりとした空気によって外気で熱せられた身体が冷まされていくのを感じた。
 入り口付近には週刊誌が並び、小さなレジスペースの中には細身の女性が立っている。
 ざっと店内の様子をうかがってみるが、客の数は片手で数えられる程度で、決して大繁盛とは言い難い。
 だが、今どきの書店などそんなものなのだろう。
 電子通信技術の発達した現代、多くの人は電子データ化された雑誌や書籍を手持ちの端末機器で閲覧している。
 その中で一部の愛好家や、時代の変化に対応しきれない者、収集という形で満足を得る者などが、ここに来ていると言ってもよいだろう。
 いや、逆に考えてみれば、書籍や雑誌というものに、それほど強い思い入れのない者たちが移行していったと考える方が合っているのかもしれない。
 彼らにとって、雑誌も電子データも関係なくて、欲しいのはそこにある情報なのだろう。
 まぁ、週刊誌だとか流行り廃りのある情報であるなら自分自身も電子版の方が場所も取らないし、値段も安く、気を張らずに見ることができるとは思う。
 ……などとくだらない事を考え、突っ立っているわけにもいかない。
 書店に来て何もせずにレジの前で店の様子をうかがってばかりでは、よからぬことを企んでいる輩と勘違いされてしまうかもしれないではないか。
 とりあえず、雑誌コーナーへ向かい、どんなものが出ているのか見てみることにしよう。
 雑誌といっても、その種類はまさに千差万別で、ジャンルも事細かに分かれている。
 例えば音楽なら、ギターやピアノといった楽器を主体にしたものから話題のアーティストが表紙を飾る流行誌、コーラスからジャズ・クラシックという特定のジャンルについて述べられているものもある。
 それらがスポーツだとか、美術、工学分野など多岐にわたって揃えられているのだから、何気なしによさげなものを探そうと思っても、どうしていいかわからないだろう。
 これなら店の奥にある文庫本のコーナーで何かしら著名な作家の本でも買った方がいいのではないかとも思いもしたが、自分自身、活字主体の書籍はどうにも眠くなってしまうことを思い出し、断念する。
 ここは無難にニュースや時事ネタ、スキャンダルなどの載っているメジャー週刊誌辺りで落ち着けておくのが一番かもしれない。
 そう結論を出し、最も近くにあったその手の週刊誌を手に取る。
 似通った雑誌は多数あったが、特別こだわりはしない。
 ただ、一番近くにあったから取った。
 それだけだ。
 退屈そうなレジ係の女性に雑誌を渡す。
 支払いを済ませ、雑誌と一緒におつりを受け取ると、そのまま自動ドアをくぐった。
 今までの涼やかな空間とは一転、じっとりとした暑さが全身にまとわりついてくる。
 思わず顔が歪み、雑誌を読む気もどこかへ飛んで行ってしまった。
 だが、今更店に戻るのも変な話ではあるし、手にした雑誌を投げ出すのももったいない気がする。
 とりあえず、どこかの喫茶店かカフェかで避暑するのが一番だろう。
 自分の中でそう結論づけ、太陽の熱視線の中をやや速足で歩んでいくのだった。
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