IPPI STYLE
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
短編 七月の梅雨
 朝方は気温も低く、口から漏れる吐息も、七月という季節に見合わない真っ白な色をしていた。
 梅雨が長引いているだとか天気予報では言っていたが、それがどうしたのだというのが正直なところだったりもする。
 空を覆う雲は、見るからに分厚く、晴れの気配はまったくない。
 それどころか、三か月前に仕舞った冬物の衣類を引っ張り出して来たくなるような肌寒さだ。
 薄手の長袖を身に着け、それでも足りないと身体が訴えてくるので、コーディネート的にはまったく似合わないだろう厚手の上着をその上から羽織る。
 それで寒さが治まればいいのだが、その程度で解決などするわけもない。
 なんで外にはエアコンがないのだろうと、油断したらすぐに悪態をついてしまうに違いない。
 道端の水たまりたちも、こちらの熱を奪おうとその機会をうかがう獣のようにも見えてくる。
 都会の真ん中にいるのに、雪山で遭難しかけているような、そんな心地だ。
 路地の建物や壁にぶつかりながら吹き抜けていく風も、妙に湿っぽい。
 それが余計に不快だった。
 冬の風は確かに冷たい。
 だけど、それなりに乾いているので、なんというか、一度しのぎ切れば堪えられそうな印象がある。
 ところが今こうして自分を襲っている風はというと、冷たさを感じた後にも、まだじんわりと冷たさが残るような感覚があるのだ。
 もう、季節感なんて言葉さえ絶滅してしまったのではないかと思える始末だ。
 とにかく、早く日が昇ってほしい。
 そうなれば、少なくとも今よりはマシになるはずだ。
 今にも雨粒が再来しそうな、微妙な空気。
 ここで今からバケツの水をぶちまけたりしたなら、その衝撃で一気に大雨が降ってきてしまうのではないだろうか。
 そう思えるくらいに、今自分が立たされている世界は冷たくて、寒くて、妙に息苦しかった。
 この不思議な圧迫感に溺れてしまう前に、できることなら今一度、あの温かな春の光を見てみたかった。
 口から漏れる吐息は温かく、自分の鼻先を温めた後、そっと消えていった。
スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。