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短編 白昼夢を胸に刻んで
 それはとある春の一日のことだった。
 穏やかな日差しと、見ているだけで心が洗われるような青色の空。
 そこに漂うは若干の青みのかかった薄い雲たち。
 探そうと思えば、いつでも探し出せそうで、でも中々見つけられないような天気。
 それだけなら気分は朗らかに染まるものの、記憶に残るかと言われれば首を縦には振りづらい。
 その日が記憶に残っているのは、それ以外の何かが起こったからに他ならなかった。
 とはいっても、何か凶悪事件が起きただとか、重大な事故に遭遇しただとか、そういうネガティブな事は一切ない。
 世界のどこかではそれらは起こっていたのかもしれないが、少なくとも自分の身の回りではそういう事態は幸いにも起こっていなかった。
 そう、それはまるで夢や幻想、幼いころに頭の中に思い描いた世界で起こるような出来事。
 多くの人が見慣れた、淡い青色を何度も塗り重ねていったような空の色が、次第に明るくなっていった。
 それは決して光の量が増しただとか、そういう事ではなくて、単純に空の色が変化しだしたのだ。
 青から緑へ。
 緑から黄色へ。
 時間はそう長くはかからなかった。
 たぶん、瞬きもせずにその変化を見届けることができた時間だっただろう。
 今思えば、それが現実だったのか、時々ではあるが疑問を抱いてしまう。
 でも、そんなことは些細な問題だった。
 今も自分の胸の中には、あの時の光景がきれいに刻み込まれている。
 太陽の光で染め上げられた空から降り注ぐ、数多の花弁。
 薄桃色のそれは桜のそれを想起させるが、季節的にそれはありえない。
 もちろん、天高くに桜の木があるだなんて考えられるわけもない。
 ただ、春の匂いを存分にまとわせながら舞い降りてくる花弁たちに、自分は心を震わせ、心を魅了されていたというのは、生涯忘れられない光景に違いないだろう。
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