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短編 悪夢の気配
 その部屋に足を踏み入れた瞬間、漂ってくる異臭に思わず顔をしかめた。
 何かが腐ったような、ずっと嗅いでいると吐き気を催してしまいそうな臭いに、手で口と鼻を塞ぐ。
 部屋の中は真っ暗で照明もついておらず、何が潜んでいるのか視認することはできない。
 だが、この部屋にただならない何かが存在することは感覚的に理解できた。
 今振り返れば、建物に入った時から妙な空気感をしていると思ったものだ。
 その時は、それが一体どうしてなのかわからず、建物の所有者の生活臭か何かだと思い込んでいたが、そうではなかった。
 そう、すべてはこの部屋から漂う臭いが、建物全体へと漏れ出ていただけだったのだ。
 しかし、その答えがわかったからといって素直に喜べないのが正直なところだ。
 こんな得体の知れない部屋に、誰が入りたいと思うだろうか。
 探索当初からわかっていたことだが、この建物には電気が通っていない。
 人が住んでいないのだから当然なのだが、今、この瞬間ばかりは、スイッチ一つで明かりがつく文明の利器が喉から手が出るほど欲しかった。
 それでも、無いものは仕方がない。
 唯一の光源である懐中電灯を手に、部屋の中の様子をうかがう。
 小さなスポットライトが壁や床を這うように動くが、それが余計に恐怖を増長させていく。
「――んっ!」
 光で照らされた壁に見えたのは、黒色の飛沫のような模様だった。
 一目見ただけでわかった。
 これは血の跡だと。
 長い時間を経て変色したからこうも黒く見えるのだと。
 そのまま懐中電灯を下に傾け、血痕の源を探す。
 身体はガチガチに固くなっていたが、怖いもの見たさ故なのか視線は懐中電灯の放つ、光の円の中へと向けられている。
 光が床を照らし出す。
 敷かれた絨毯は赤黒く染められ、元からあったであろう柄も確認できない程だった。
 そのままライトを手前へと戻していく。
 血だまりのようなものは見られなかったが、絨毯が血を吸っているのか、あまり良い気分ではない。
 これがまだ乾いていない頃合いであったなら、きっともっとひどい臭いを放っていただろう。
「……血の跡くらいか」
 不安は完全に拭いきれてはいなかったが、それ以外何もなかったことに安堵して、一息つく。
 ただ、それと同時に一つの疑問が頭に浮かんだ。
 ――では、この臭いはどこから来たのだろう?
 普通、血の跡も臭いはするが、腐臭というには少々質が異なる気がするのだ。
 それこそ、肉が腐って発生するようなものとは――。
 瞬間、背筋にゾッとする感覚が走る。
 この部屋には何かが隠されている。
 それが何なのか。
 どこに隠されているのか。
 不思議な力に導かれるように、足が前へと進む。
 そして、開け放たれていたはずの扉がバタンと閉まった。
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