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短編 地元の山で
 セミの鳴き声が喧しく響き渡る山中は気温もそれほど高くはなく、過ごしやすい空気感を持っていた。
 これからますます暑くなる季節。
 これほど気軽に、そして涼をとれる場所は貴重だ。
 それなら避暑目的にやってくる人も居そうなものだが、山中を通っている道路を走る車の姿は、自分たちが来てから数時間、一台もない。
 夏休みとか週末であるならともかく、今は七月の上旬。
 それも週の半ばの平日だ。
 わざわざ車で、特に観光地でもないような山の中までやってくる人の方がずっと奇特だろう。
 それに、道路といっても綺麗に舗装されたものではなくて、車一台がやっと通れるようなもので、地形の変化によってアスファルトも歪んだ形状をしてしまっている。
 そんな地形もあって、こんな場所までやってこれるのは、決して緩やかとは言えない斜面を自転車で駆けあがってくるような自分たち地元の若い人間くらいなものだ。
 しかも、その行動に大した意味などないというのだから、若さゆえの過ちと言ってもいいだろう。
 昔はまだ地元にも子供の数が結構あって、みんなでワイワイ騒ぎながら山の中を駆けまわっていたものだ。
 でも、最近はこの辺りに住む人もどんどん減っていって、ほとんどが高齢者だ。
 だからきっと、この場所で意味もなく騒ぐのは自分たちの世代が最後なのだろう。
 誰かに言われたわけでもないが、なんとなくわかっていた。
 過疎と文明の進歩によって消え去る情緒があることを。
 そして、自分たちもその例外ではないということを。
 ふと、視界の端に傾きかけた看板が入る。
 山にごみを捨てるなと書かれたそれを見て、思わず苦笑してしまった。
 しきりに自然保護だとか訴える声を聞くが、自然だけ保護すればいいのだろうか。
 今、この場所はゴミ一つない。
 ごみを捨てる人すらいなくなってしまったとも取れる。
 それをいいことだと喜ぶべきか、嘆くべきか、自分たちに答えを出すことはできない。
 ただ、片面だけを盲信的に追及するのは、皮肉を生む材料を量産しているのに他ならないだろう。
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