IPPI STYLE
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
短編 希望
 真っ暗闇の中。
 一切の存在を視認できない世界に、唯一の例外が生まれたなら、無意識にも視線は向かってしまう。
 それは明るければ明かるほど、鮮やかであれば鮮やかであるほどに意識を惹きつけ、虜にしてしまう。
 まるで虫を呼び寄せる一輪の花のように。
 まるで金属を引き寄せる磁石のように。
 まるで欲しい物へ群がる人間のように。
 周囲の暗闇のせいもあって、それはまばゆく輝いて見えた。
 ただ、不思議なものでそれがどんな色をしていたのか、どんな形状をしていたのか、頭に入ってはこなかった。
 しかし、確かにそれはそこに存在していたのだ。
 目や脳の錯覚だったとしても、そこにあったように見えたのは事実だ。
 右も左もわからない。
 ここがどこであるのかという認識すらあいまいな世界で見つけることのできた道しるべ。
 それが自分にとってどれだけ救いになっただろう。
 もしかしたら、これは単に自分の妄想だとか夢の中だとか、そういう現実とは異なる世界なのかもしれない。
 でもそれを確認しようとは思えなかった。
 夢を見ている時にありがちな、思考回路の偏りがあったせいだろう。
 意識が吸い寄せられる感覚。
 自分が幽体にでもなったかのように、何の抵抗もなくそこへと吸い寄せられていく。
 疑問だとか違和感は全然なかった。
 それが自分が求めていたものだという確信だけは、強く持っていた。
 暖かいようで、それでいて安心できる感覚。
 それは光や温度という科学的な要素以外の何かも感じられる。
 結局、この暗闇の正体は何なのか。
 宇宙空間というよりも、暗い地下室に近いような感覚の世界。
 そこでの出来事は最後まで答えが出ないまま。
 夢と片付ければそれまでだが、何かの暗喩と捉えることもできなくもない。
 意識が覚醒すると共に周囲に光が広がっていく。
 そこでようやく現実世界に帰還できたのだと実感がわいてくる。
 あの暗闇の光のような強いエネルギーに溢れる世界。
 そこで目を細め、見上げた空は鮮やかで、そしてどこまでも広かった。
スポンサーサイト
コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。