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短編 お昼のカレー
 目の前から漂ってくるスパイスの香りが、ほぼゼロ状態に近かった食欲を、みるみると増幅させていく。
 それほどに香りという要素は料理に置いて重要な位置にあるらしい。
 特段、変わったところがある店でもない。
 ごくごく一般的な飲食店のひとつ。
 かといってチェーン店のようなマニュアル通りの店というわけでもなく、言うなれば素朴で味のある店というのが今の自分には最もしっくりくる表現だろう。
 それなりに清掃された店内。
 しかしながら、古さと趣き、そして年季が醸し出す独特の空気が漂ってくる。
 この感覚は、決して嫌いではない。
 何というか、製錬しすぎていない、荒削りのほほえましさというのだろうか、人間味があるというか、親近感があるのだ。
 来客の対応をしてくれる店員もまた、一般のチェーン店のそれとは違うというのも面白い。
 まぁ、好きか嫌いかというと微妙なところではあるが。
 ……そういう意味では、自分はどちらかというと機械的というか人工的なマニュアル、店舗の方が気兼ねなく入ることができて気楽で好きだ。
 また、店内に流れている有線放送の音楽が妙にレトロだ。
 それに、時間の流れもこの場所だけゆっくりとしているように思える。
 古き良き時代にタイムスリップしたかのような、そんな感覚に、変に新しさを感じてしまうのは、その時代を生きていない人間ならではの感覚なのかもしれない。
 体感でも室温は二十五度は超えているだろう。
 涼しいというよりも暑くはないという感覚の方が強い空気感だ。
 ぼんやりと時間を過ごすのもいいが、それでは目の前の料理が冷めてしまう。
 それに、胃袋が音を奏でて恥をかく前に一口食するのがいいだろう。
 皿の上に盛られたのは店自慢のグリーンカレー。
 好き嫌いが分かれるメニューらしいが、自分はそれほど苦手ではない。
 苦手ではないってことは好きとも言い切れないわけだが、店自慢の一品であるなら口にしても悪いことはないだろうとの思いからだ。
 スプーンを口に運ぶと、スパイスに加えてココナッツの風味が口腔内に広がる。
「……うん、悪くない」
 思わず口元が緩むのは、美味しさの証明だ。
 再びスプーンでカレーをすくい、口へと運ぶ。
 今日のランチタイムは中々に充実したものになりそうだ。
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