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短編 サークル活動
 時速80キロで流れていく景色は、風景の輪郭を保持することもできず、抽象画の油絵を眺めているような気分になる。
 道路の脇にはコンクリートの壁が並び、その向こうには緑豊かな山々の姿。
 一部は太陽の光を受けてか、緑色に輝いて見える。
 民家らしき建物はなく、まさに大自然の中を道路が突き抜けているような、そんな場所だった。
 芸術だとかには興味が薄い自分だが、そういったものにでも興味を持たなければやっていられなかった。
 絵画のような世界が車窓越しに見えるといっても、油絵のような臭いは当然あるわけでもなく、車内エアコンの送風口から漂ってくる冷風が、人工的な無臭ぐらいしか感じられない。
 高速に入ってから数十分が経過していた。
 最初の内は多少の会話もあったが、今となっては特に話題もなくなり、皆が無言になっていた。
 にわかに信じがたいかもしれないが、これでも同じサークルの仲間だったりする。
 同じサークルではあるのだが、実際良く知らないのだ。
 小さなサークルであれば違う事もあるのだろうが、このサークルの参加人数は80人近くある。
 もちろん、全員が律儀に参加しているわけではなくて、活動には参加できていない名前だけの者も幾らかはいるわけなのだが、それを抜きにしても結構な数だというのがわかるだろう。
 そんな大所帯では、派閥というかグループ分けがいつの間にかなされているというのも自然な事だ。
 ここまでくれば察しが良い人はわかってくれると思うが、この自動車というのはそういった他のグループからあぶれた者たちが偶然にも乗り合わせたものだったりする。
 身内同士であれば、それなりに会話もするだろうし、社内の雰囲気もそれなりに明るくはなるだろう。
 その割合が多ければ多いほど、少数派は肩身の狭い思いをするわけだが……。
 ――とにかく、ある意味奇跡的に少数派で構成されたこの自動車は、無言で高速道路を進んでいく。
 心なしか、前方を走っている車が楽しそうに見える。
 きっと気のせいなのだろうが、どうにも頭に引っかかって仕方ない。
 無意識のうちに顔をしかめ、窓の外へと眼光と共に私怨を散らす。
 何か新しい出会いだとか、発見だとか、思い出が生まれると期待していた数日前の自分を殴りつけてやりたい。
 窓の外では相変わらず絵画みたいな世界が、ゆったりと移動を続けていた。
 妙な息苦しさを覚えながらも、そっと両目のシャッターを閉じて、座席に寄りかかる。
 漂ってくる冷風が、妙に肌寒かった。
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