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短編 鳥居の先に
 夜の8時ということもあって、周囲は真っ暗で、灯りなしには出歩くこともままならなかった。
 一歩足を踏み出すごとに、湿った大地を踏みしめる感覚が脚先から伝わってくる。
 これが都会だったならもっと固い感触が返ってきて、視覚的にも外灯が夜道を照らしてくれるのだろうけど、無いものをねだったところでどうしようもない。
 おかげである程度の暗さだったら感覚でなんとか目的地まで歩けるようになったのだけど、それもこの村だけでの話だ。
 無論、道は明るいに越したことはない。
 暗いというだけでもマイナスなのに、舗装もされていないものだから、慣れていなければ夜間に外を出歩くなんて無謀ともいえる。
 村民であっても、小学生くらいであれば迷って大捜索が行われてしまうレベルなのだから。
 そんな夜道を何故歩いているのかというと、それはもちろん理由があるからで、それは自分の右手側にそびえる山にある。
 山というのは自分たち地元の人間の俗称みたいなもので、実際山と呼べるほどの高さがあるわけではない。
 むしろ丘だとか呼んだ方が正解なのだが、実際そう呼んできたのだからそれ以上何も言えないということで勘弁してほしい。
 決して平坦とはいえない道を歩くこと数分。
 右手に朽ちた鳥居と、石の階段が姿を現した。
 これだけ見れば大抵の人は理解できるだろうが、この山の上には神社がある。
 足を止めると、周囲は一気に静まり返り、夕方に降った雨の湿気が、何とも言えない泥っぽいにおいを感じた。
 石段には水たまりこそなかったが、乾ききらなかった雨水がほんのりと残っている。
 滑って転がり落ちないよう、念のため気を払いながら階段を上がり始める。
 別に、今日は何か特別な祭りだとかイベントがあるわけではない。
 何もないとはいわないが、それは村を挙げてとか言う大きな規模のものではなく、身内で行うようなこじんまりとしたものだ。
 それ故にこうして各個がばらばらに集合する羽目になったのだが。
 石段は決して低いとはいえず、数にして数十段。
 具体的な数字は数えた記憶がないのでわからないが、結構な数があってしかも結構急なので結構な高さになる。
 一番上から落ちたらまず無事では済まないだろう。
 段のひとつひとつに足をかけ、体重をかけて上がっていく。
 さすがに息が上がり、足に疲労が溜まってくる。
 普段から運動をしている方ではあるが、この石段は別格だ。
 数年前まではスポーツ系の部活でトレーニングとして往復をなんどもやっていたというのも納得がいく。
 結局、後半で失速しながらもなんとか上りきると、そこには無人の境内が広がっていた。
 人の姿は見えず、暗がりと階下よりも涼しい空気が汗ばんだ肌に心地よかった。
 ちょっと早く着きすぎたかなどと思いながら鳥居をくぐり、境内を進む。
 風の音と虫の鳴き声が、妙に響いて聞こえた。
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