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短編 鍛冶
 木枯らしが枯葉を巻上げて遊んでいる季節。
 タンクトップ姿で作業を続けている男がいた。
 男は全身から汗を流しつつ、一心不乱に作業に没頭している。
 男が作業を続けているのは、とある工場。
 目の前では赤々と炉が燃えていた。
 カンカンと金属を叩く音が反響する。
 男の手に握られたハンマーが、熱せられた金属の棒を叩いていく。
 一定のリズムで数回叩いては、炉で再び熱する作業を繰り返していく。
 工場に他の人間の姿はなく、ただ作業音が侘しく響く。
 そこへ、工場の奥から小さな足音が近づいてきた。
 しかし男は顔を向けることすらせず腕を動かし、ただ一言、言い放った。
「危ねぇから、近づくんじゃねぇぞ」
 男の声に、足音の主はピタリと足を止めた。
 そしてその場にしゃがみこみ、興味深げに男の作業風景を眺める。
 それは小さな子供だった。
 小学生にも満たない、幼い子供。
 その瞳は新しい発見をした冒険家のように輝いていた。
 男の腕がようやく止まったかと思えば、手元のすっかり薄く伸びた金属の棒は水の中へと姿を移す。
 まだ高温だったらしく、入水した瞬間に水が蒸発する音がジュウッと周囲に広がった。
 その音に驚いたのか、子供は目を丸くして、後ろへ下がる。
 男はイカツイ顔を緩めて、笑った。
 全身汗だくになりながら、男は最後に手にした金属の棒――いや、一本の太刀を掲げて見せる。
 太刀は、炉の光を浴びて、キラキラと刃を光らせる。
 その様を眺めると、男は首を傾げた。
 まだ満足いかない、そう言っているかのような表情だった。
 男は出来上がったばかりの刀を、隣の炉へと放りこんだ。
 炉の奥で金属同士がぶつかり合う音が聞こえたが、すぐに消えてしまった。
「よし、じゃあ今日はここまでだな」
 男は立ち上がると、子供にそう言い聞かせる。
 子供は小さく頷くと、トテトテと先を切って工場の奥へ走っていった。
 その後をゆっくりと歩いていく男。
 食事を取り、シャワーを浴びて、最後にもう一仕事。
 今日の仕事も、遅くなりそうだった。
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 木枯らしが枯葉を巻上げて遊んでいる季節。 タンクトップ姿で作業を続けている男がいた。 男は全身か
2012/11/04(日) 00:17:15 | まっとめBLOG速報
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