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短編 1年目の感慨
「年月が経つのって、思った以上に早いですよね」
 真っ白に染まった校庭を眺めながら、若い男性の新任教師は嘆息を吐いた。
「そうね……学生の頃と違って、社会人になると時間の経つのなんてあっという間よ?」
 苦笑を浮かべながらそう答えるのは、この道数十年のベテラン女性教師。
「次にそれを感じるのは、きっとベテランになってからね」
 そう続けると、女性教師は机の上に乗ったコーヒーカップを口に含む。
 そんな彼女の眼鏡の奥に輝く瞳は、どこか遠い過去の出来事を思い返しているかのようだった。
「そうですか……僕も後悔しないように生きたいものですね」
 女性教師の言葉にうなずきながら、窓の外をぼんやりと眺める男性教師。
 窓ガラスを隔てた先では、数人の生徒たちが雪遊びに興じていた。
 防寒着もなしに、学生服姿で雪合戦やら雪だるまを作っている姿は、彼らがまだ無邪気な子供であることを思わせるには十分すぎて、男性教師にとっては感慨深いものだった。
「僕も数年前はあんなだったんですかねぇ」
 過去を顧みるように、つぶやいた言葉。
 その返事はすぐに返ってきた。
「――そうよ。そして、あの子たちもすぐに大きくなっていくわ」
 上から降ってきた言葉に、反応して顔を向けると、すぐそばに先ほどの女性教師が立っていた。
 その手には、白い湯気を立てている紙コップ。
「ほら、あったまるわよ」
「あ、ありがとうございます」
 男性教師は紙コップを両手で受け取ると、その中へと視線を移す。
 そこには茶色い液体が、香ばしい匂いを放っていた。
「ブラック派だったらごめんなさいね。ミルク多めだから、ちょっと甘いかもしれないけど……まぁ、頭に栄養入れるならそっちの方がいいかもしれないわね」
「――いえ、いただきます」
 小さく笑う女性教師の前で、気持ちばかり頭を下げると、男性教師は紙コップに口をつけた。
 コーヒーは淹れたてらしく、熱さから、少し含んだだけで口を離してしまう。
 その様子を見て、女性教師はたおやかに笑った。
「さぁ、目が覚めたでしょう? 明日の準備もあるんだから、しっかりやりなさい」
 そう言って自分の席へと戻っていく女性教師の背中を、男性教師は静かに見送った。
 そして――再び、職員室に静寂が訪れる。
「――さて、もうひと頑張りしますか」
 人知れず、そうつぶやきながら男性教師は自分に活を入れる。
 彼の手中にある紙コップは、まだ白く湯気を立ち昇らせていた。
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2012/12/09(日) 05:17:27 | URL | 探偵GOD #mQop/nM. [ 編集 ]
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