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短編 3分の欲求
 人生において、この瞬間ほど時間を気にする時はないだろう。
 刻々と過ぎていく時間が、この時ばかりはその2倍、3倍、いや5倍以上にも感じられた。
 タイマーの時間を確認する。
 デジタル表示の残り時間は、0になるにはまだ程遠い。
 溜息をついてもう一度見つめる先にあるのは、テーブルの上に佇む小さな容器。
 一度開けられた薄い蓋は、重しで押さえつけられている。
 そのわずかに開いた隙間から漏れる蒸気は、芳醇な香りを伴い、空腹を刺激して更に増長させる。
 途端、腹の虫が強く抗議する。
 部屋には自分しか居ないが、反射的にお腹を押さえて周りの様子を気にかけてしまう。
 タイマーの時計はまだ1分以上の時間を残していた。
 少しくらい早くても、構わないだろう。
 そんな思考が頭をよぎるが、さすがに1分という時間は壁が高すぎた。
 硬くて中に芯が残っている状態は、さすがに遠慮したい。
 はちみつを混ぜ込んだ砂時計のように、時間がゆっくりと流れていくような、そんな感覚。
 それはある種の罰刑のようにも思えた。
 漂ってくる香りに極限まで食欲を刺激されつつも、時間という番人によって、それを阻まれる。
 身体が落ち着きなく動き、気ばかりが焦る。
 人間とはここまで欲に突き動かされるものかと、自分自身でも変に感心してしまう程だ。
 別に、他の用事を済ませても構わないのだが、それによってタイマーの音を聴き逃して、伸びきった麺を食べるのは何としても避けたかった。
 そんなことを考えているうちに、待ち焦がれた結果――タイマーの電子音が部屋の中へと響き渡る。
 蓋の重しを取り払い、蓋を切り離す。
 そこでタイマーを止めていないことに気付いて、慌ててタイマーを切る。
 完全に口を開けた容器からは、スープの香りが湯気と共に立ち上る。
 箸立てから1膳、箸を取ると容器を引きよせて、中に潜んでいた麺を解し、そして口内へと一気にすすりこんだ。
 待ち続けた分の時間に見合う、絶妙な歯触りとスープの旨みが、手を動かし続ける原動力となる。
 程良い塩気と旨みは、空腹にとって麻薬のような耽美な依存性を持っているのではないだろうか。
 ふと頭に浮かんだ、そんな思考も、食欲の前に霧散してしまう。
 そう、今は――食べることこそ至高の喜び。
 考えるのは、食べ終えてからにしよう。
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2013/01/02(水) 11:06:17 | URL | まゆみ #- [ 編集 ]
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