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短編 ゴール
 数日に渡るレースもついに佳境を迎え、残すは市街地に設けられたゴールラインを割るばかりとなった。
 愛用の車は強い日差しや雨風にさらされたこともあって、心なしか疲れ果てたような印象を受ける。
 そんな相棒をいたわる様にハンドルを握り、しかし最後まで動き続けてくれるよう活を入れるがごとくアクセルを踏み込む。
 ここまでの道のりは、正直過酷だった。
 途中で脱落していく競争相手も山ほど見てきた。
 タイヤがパンクして、予備のタイヤが不足してしまって苦汁をなめた者。
 バッテリーが干上がり、炎天下の中立ち往生してしまった者。
 長時間の運転により、運転手自体が体調を崩してしまった者。
 今思えば、完走するためには半分近く運が絡んでいたのではないかと感じる。
 自分自身も、稀にみる幸運に助けられたといっても過言ではない。
 天気の変化もそうであるし、先頭を走っていた車が故障したのもそうだ。
 さまざまな要因が絡み合っているのは間違いないが、やはり完走できるかは経験と運がすべてだといっても差支えないだろう。
 市街地に入ると、観衆たちのすがたがあちこちに見えてきた。
 手を振ったり、歓声を上げたり。
 自分を祝福してくれているのだとわかり、感極まってくる。
 まだゴールをしていないというのに、胸が高鳴り、視界が涙でぼんやりとしてくる。
 服の袖でとっさに目元をぬぐい、感情を制御しようとする。
 まだ、ゴールをしていない。
 泣くのは完走をしてからだ。
 ゴール寸前でスリップして走行不能になった選手も過去にはいるのだ。
 最後まで油断をしてはいけない。
 ちらりとバックミラーで後続車を確認する。
 視界に入る限り、そういった車は無いようだった。
 順位を競うのであればかなりうれしいことだ。
 だが、完走することすら難しいこのレースにおいては、同士がいないというのはそこはかとなく不安を覚える。
 他人の心配などしている場合ではない。
 そう自分を奮い立て、前へと意識を集中する。
 緩やかなカーブが続く。
 その先に、ゴールラインがあるはずだ。
 気持ちが高鳴る。
 観衆がどんどん増え、マスコミらしきカメラやフラッシュも多数みられる。
 ここがゴールなのだという実感が胸に広がっていく。
 そして、そのままゴールラインを通過する。
 ブレーキを踏み、脇へと車を避ける。
 体中にどっと疲労感があふれてくる。
 けれども、それは決して不快ではなかった。
 目を閉じて、深く息を吐く。
 そのまま、じっくりと勝利と完走の余韻を味わうのだった。
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ブログを拝見しました
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これからもブログの運営頑張って下さい。
失礼致しました。
2014/07/30(水) 14:42:30 | URL | つねさん #- [ 編集 ]
Re: ブログを拝見しました
ご丁寧にありがとうございます。

申し出は大変ありがたいのですが、今回は遠慮させていただきます。
本ブログの作品は筆者が書くことをやめない為に続けているものですので、
特別雑誌に載せたいという願望はございません。

毎日更新をしていく予定ですので、
また見に来ていただけたなら幸いでございます。
2014/07/31(木) 11:01:06 | URL | ippiyou #- [ 編集 ]
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